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SDA賞受賞者にお話をうかがいました。
by sda-interview
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「世界の終わりから考える未来のこと」-前編
2012年のSDA賞大賞は、日本科学未来館で行われた「世界の終わりのものがたり」
と銘打った展示でした。
以下は、2013年1月25日に東京で開催した大賞セミナーにて、
受賞者の前田豊氏(氏デザイン)がお話しされた内容を記録したものです。
この展覧会は東日本大震災をきっかけに企画されたと思われがちですが、
実はもっと前からの企画であったこと、
開催の主旨や会場デザインの製作過程が、作者の思いとともに詳細に語られています。
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モノのない展示をどうするか

「世界の終わりのものがたり」は、
去年(2012)の3月10日から日本科学未来館で行われた科学展です。
まずはじめに、日本科学未来館に行ってオリエンを受けたとき私たちに配られた
企画書があるのですが、それが結構インパクトがありました。

普通、科学展と言うと、恐竜の骨があったりとか、人体模型があったりとか、
目玉の何かがあって初めて人が来るという図式があるのですが、
この企画展に関してあるのは73の問いだけです、という話をされました。
その73の質問と、質問に答えるための材料を用意するので、
そういったかなり変わった科学展ということを理解してやってくださいと、
そういう説明でデザインが始まりました。

この企画書の中には73の質問しかありません。
こういった質問だけが書かれてあって、
例えば「死はいつからなぜ存在するのでしょう?」とか、
「生と死の境はどこにあるのでしょう?」とか。
全体で4章から成っているのですが、すべて、こういった文言、
例えば「どんな病気になるかわかったら、知りたいですか?」とか、
かなり謎めいた企画展であるなという印象でした。

 私が直感的に思ったのが、まず、情緒的なデザインや
まじめなデザインにすると、人は来ないのでは?ということでした。
これは軽く見せないといけない。
重い雰囲気で、まじめな表現になっては、
(3月10日にスタートするということもありますし)うまくいかないのではないかと思いました。
それで、ものすごくディテールですが、明朝体を使うのはやめようとチームで話しました。
縦組み・明朝体はやめて、極論丸ゴシックで説明しようといったところからスタートしました。

全体で4章から構成されるので、わかりやすくゾーニングするために色を使うことを考えました。
あと、モノがないので、質問を見せる手立てを考えないといけないのですね。
それで、例えば、こんなのは現実的にはちょっと無理かなと思ったんですけれども、
文字を映像にして、長い短冊状のスクリーンに表示して、
それを滝のように上から下に落とすとか、逆に、下から上に上げるとか、
そういったことで73の質問を中心に空間を組み立てていけばいいのではないかと。
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そうすると、例えば空間的にはこんなことになって、
それはそれで美しい空間で、さらに、暗く、重たくはないような、
ちょっと来てみたくなるような幻想的な空間になるのではないかという構成で考えていました。
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そして、よくある話ですが、実際にプロジェクトを進めていく中で
コストの問題に直面しました。あと、上から物を吊るというのが、
未来館の構造的にあまりよくないとか、いろいろなことが出てきました。
せっかく考えた短冊状のプランは実際は実現できなくて、
代わりに登場することになるのが、
この象徴的な三角錐のオブジェクトです。
これは裏側が木製になっていて、
正面は膜が張ってあって内照式になっているのですが、
暗い空間に光る質問が73個並べてあって、
ある意味険しい山を登っているような空間を作っていこうという形で問題を解決しました。
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私が重要視したのは、全体をくくるグラフィックの核です。
恐竜の骨もない、人体模型もない。そこにはスペースシャトルもない。
本当に73の質問しかないので、
人を呼ぶためには何かしらアイデンティティーが必要だと考えました。

さらに空間で扱う材料が、津波やガンや交通事故死といった、
かなり際どい内容、普通に考えると暗い内容だったので、
それらをイラストレーションに変換して見せることで
その事実を和らげる必要がある。
だったら、このイラストを個性的なものとすることで、
絵を広報的な材料にしようと目論みました。
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実際は泰間敬視氏という個性的でありながら説明的な絵を描ける方に
依頼してこの作戦は実現できました。

今回、来場者が予想を大きく上回ったのですが、
それはこのイラストレーションの力が大きいのではと思っています。

中編につづく

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# by sda-interview | 2013-03-19 22:41