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SDA賞受賞者にお話をうかがいました。
by sda-interview
第一回「おいしい風景―明治ビッグミルチ」のできるまで  後編
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  ビッグミルチの製作はどのように進められたのですか?

これは日本ではなくベトナムで製作しました。
3ヶ月あまりの短い期間で、
現地の方が頑張って作ってくれました。
このデザインはとてもシンプルでストレートでわかりやすく、
それゆえ海を越えて、
プロジェクトに関わる多くの人の思いを一つに束ねてくれました。
みんな一丸になれたという感じです。
一つ一つのパーツが手作業で作られ、
パーツどうしがクリアランスゼロでおさまるよう、
仮組みをして細部の形状を調節しています。
日本とベトナムでは気温が違いますから、
温度変化による伸び縮みも考慮しておこなっています。
その後ばらされ、同じパーツごとに重ねられ、
効率よくコンテナに入れられ、日本に運び込まれました。




  大きさについて教えてください。
資料を見ますと、全体で幅が165.95m、高さが27.59mとなっていますが。

実際のチョコレートの38万倍の大きさです。今日はミニチュアをもってきました。(と、白い模型を指して)これは1/30の模型です。
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  すごいスケールですね。
その倍率を決められたのはやはり工場の壁面の大きさからですか?

第一回「おいしい風景―明治ビッグミルチ」のできるまで  後編_b0246116_19555028.jpgそうです。
まず工場の高さに対して、
チョコレートがぴったりと覆う、
高さ方向の拡大倍率を決め、
それからチョコレートの
タテヨコ比に合わせて幅を決めました。
板チョコを構成する四角い一粒一粒の大きさは、
幅11.9m×高さ9.4mの大きさです。
掘り込まれたmeijiロゴの「i」が
人の背丈くらいになります。

第一回「おいしい風景―明治ビッグミルチ」のできるまで  後編_b0246116_11473742.jpg


  大きさに関連して、
日頃サインに携わっていると気になることですが、
ビッグミルチは屋外広告物条例に該当しますか?

該当しています。

  やはりしているのですね。
大阪の屋外広告物条例の資料を確認したのですが、
建物の大きさまでは広告面積は大丈夫だったと思いますが、
これは建物の大きさよりちょっと大きいような気が?
そのあたりは大丈夫だったのですか?

広告物条例の対象となるのは商品名と事業所名だけですので、
届出の対象となるのはチョコレートに掘り込まれたロゴマーク部分だけです。
ロゴマーク部分の面積と配置関係をみると建物の大きさより小さく、
基準に合致しています。




  ズバリ、
製作コストがどれくらいかという点も気になるところではありますが・・。

このチョコパネルは、広告という機能だけでなく、
設備機器配管スペース(メカニカルバルコニー)の
カバーパネルという機能も担っています。
機能的に必要なものです。
コストミニマムを実現するための創意工夫を徹底的におこなっているので、
標準的な目隠しルーバー壁等と比較してそれほど大きな金額差ではないと思います。


  同じコストでプラスアルファの価値、
宣伝効果や企業イメージアップができたということですね。

地域の方やJRを利用する多くの方が、
このチョコレートを見て、
「おいしそうだな」「楽しいな」と思っていただいているのだとしたら
とてもうれしいことです

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  おいしいといえば、
本当にチョコレートの匂いがするとか、
という話もありますね。

そうですね。
高槻出身の槇原敬之さんの歌の中で、
「チョコレート工場の匂いがする」という歌詞が出てくるそうです。




  工事中から反響があったと予想されますが、そのあたりは?

バレンタインデーに合わせるように、
2011年1月から2月にかけて、
全42粒が一粒一粒設置されていきました。
JRの車窓から、日々成長していく経過の楽しさと巨大さで、
組み立て中からブログやTwitter等で話題だったようです。
「今日は2粒取り付けられました」とか、
「チョコレートにうっすらと粉砂糖のような雪が積もっています」と
いったつぶやきや写真、
映像等がアップされていたようです。


第一回「おいしい風景―明治ビッグミルチ」のできるまで  後編_b0246116_15531883.jpg  実際にわれわれもユーチューブで取り付けの
様子を拝見させていただいたのですが、
最後のピースがカチャっとおさまるところは
まさに感動でした。
こういうものが自分の住んでいる地域に
もしあったら楽しいですし、
街の誇りと思えますね。

工事中の様子も見ていてとても楽しく、
地上で組み立てたチョコレート一粒一粒がクレーンで吊り上げられ、
取り付けられて出来上がっていく様子は、
なんというか、ガリヴァー旅行記のワンシーンのようでした。


第一回「おいしい風景―明治ビッグミルチ」のできるまで  後編_b0246116_1183191.jpg





  ところでこれは車窓から以外に、
近くで見ることはできるのでしょうか?

大阪工場の正門は線路とは反対側にあるため、
正門側からは見ることはできません。
一番近くで見れるのは、やっぱり車窓からです。
ただ、「ビッグミルチを近くで見られますか?」
という問い合わせも増えているようで、
工場見学ルートの中にビッグミルチ前での
記念撮影を盛り込む等お考えのようです。


  いいですね。
他にビックミルチが設置されたことによって明治のお客様や、
クライアントにとってどういった効果があったのでしょう?

「子供の頃を思い出して懐かしい」
という反響もあるようです。
「明治ミルクチョコレート」が1926年の誕生から
長年にわたって人々に愛され続けてきたように、
この建物が地域やお客様、工場で働く方々に
長く愛され続けていただけたら本当に嬉しいです。
最後にもう一つだけ嬉しかったことと言えば、
第一回「おいしい風景―明治ビッグミルチ」のできるまで  後編_b0246116_18441717.jpgこのプロジェクトに携われた
明治様のプロジェクトメンバーのなかに
社会人軟式野球チームの方々がいらしたのですが、
この夏34年ぶりに、
明治大阪工場チームが大阪府代表として
全国大会へ出場することが決まった時、
ビッグミルチを背景に優勝旗を持って
整列した記念写真を送っていただきました。
それはとても嬉しかったです。


  それは嬉しいですね。
それにしても今日は、世の中やろうと思えば何でもできるし、
デザインの力で変えられることって結構あると大いに勇気づけられました。

SDAのHPに掲載されている審査評のなかに、
「実施を決断した方の勇気」という言葉がありましたが、
本当にそうだと思います。
このアイデアの実施を決断していただいた明治様の期待を裏切らぬよう、
徹底的にスタディをおこないました。
しかし実際のところ、完成したパネルをこの目で見るまではものすごく不安でした。
振り返ってみると、その不安を解消するため、
さらにスタディをおこなうという繰り返しだったような気がします。
私は長年にわたり明治様のプロジェクトを担当させていただいています。
このような夢のあるプロジェクトを共に実現させていただけたこと、
とてもうれしく、いまだ夢のようです。




明治の工場の設計に長く携わり、明治のチョコをこよなく愛す渡辺さん。
今回渡辺さんとチームの情熱が作る人ひとりひとりにも伝わって
ビッグミルチプロジェクトを大成功に招いたのでしょう。
そして渡辺さんのものづくりに対する真摯な取り組みと熱い語りに、
取材班一同いたく感動いたし、襟を正す思いでした。
入江様、渡辺様本日はご協力まことにありがとうございました。

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企画:SDA広報委員会
インタビュアー:井原由朋
編集構成:峰朗展、宮崎桂
撮影:小林丈豊
日時:2011年11月1日 大成建設本社にて
by sda-interview | 2011-12-19 11:14
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