北欧食器が当たるかも!Xmas料理特集!

SDA賞受賞者にお話をうかがいました。
by sda-interview

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第一回「おいしい風景―明治ビッグミルチ」のできるまで 前編
第45回SDA賞で最もインパクトがあった「おいしい風景―明治ビッグミルチ」。
日頃サインのデザインや制作に関わるわれわれとして、
巨大なビッグミルチのクオリティーや製作プロセスについて興味はつきません。
「SDA賞インタビュー 制作者に聞く」の第1回は、
応募責任者の大成建設、入江健二様と、
実際の設計監理に携わった渡辺賢様のお二人にお話しをうかがいました。
(以下、お答えは渡辺様です)




  SDA賞の一次審査段階でビックミルチのスケール感や
サインとしての訴求力が話題になり、
これすごいよね、という印象を持ちました。
その後5月にSDAの総会が大阪で開かれた際に、
電車に乗ってビッグミルチの実物を窓から拝見させて戴きました。
想像はしていましたが、やはりその大きさと、
チョコレートの感じがとてもよくできていて、
おいしそうに見えることにビックリしました。
それでどのように作ったのか、
制作に携わった方の生の声をうかがってみようということになりました。
まずは、この計画が開始された時期はいつごろで、
どのように進められたのでしょうか?

最初に明治様からお話をいただいたのは2008年の夏でした。
その時点では新工場の計画地が大阪の高槻ということは決まっておらず、
「これからのお菓子工場というテーマで提案をして欲しい」という内容でした。
わたしたちはその依頼に対し、
「これからのお菓子工場とは?」と検討を重ねました。
安全・安心、環境負荷の低減、
製造環境のフレキシビリティといった課題は
当然達成すべきスタンダードなものと考え、
「働く人や地域の人に愛される工場」
「お菓子の楽しさやおいしさを感じさせる工場」というコンセプトを
実現する提案ができればという思いに至りました。
巨大なチョコレートファサードはそうした思いから生まれました。
お菓子作りの現場と社会とを結び、
新しいコミュニケーションの輪を生み出す
「コミュニケーションファサード」としての提案です。
明治様へのプレゼンテーションの際、
小さなお菓子箱に入れた小さなチョコレート工場の模型を用意し、
プレゼントいたしました。
そうしましたら、これ(チョコ)を作って欲しいということになったのです。
それがスタートでした。




左)渡辺氏、右)入江氏




  そうしますと、ファサードの提案だけではなく、
工場全体の提案が求められていたのですね。

そうです。お菓子工場というのは、新製品の開発も早いですし、
それに合わせて製造ラインも頻繁に変化するので、
どんなお菓子でも作れるようなフレキシブルな製造環境が求められます。
また、より少ないエネルギーで最適な製造環境が実現できるよう、
環境に配慮した製造環境の構築が求められます。
安全・安心で高品質な製品を、
より少ない環境負荷で効率的に製造するため、
外部環境の影響を最小限に抑えた安定した製造環境を構築します。
その結果、お菓子工場の多くは、
外部に対して閉ざされた無表情で巨大な壁面が
たち現れることになってしまいがちです。
大阪工場の敷地は、敷地南側を隣接して走るJR京都線の車窓から
真近に見える好立地です。
敷地南側には緑地帯が広がり、
その向こうに工場建物という配置計画です。
非常に可能性がある場所で、
緑地の向こうに無表情な壁面では非常にもったいないと思いました。
巨大な板チョコによる「コミュニケーションファサード」という
アイデアにぴったりの場所でした。
実は、この板チョコの背後には、
製造環境をフレキシブルにサポートする
設備機器配管スペース(メカニカルバルコニー)が設置され、
製造ラインの変化に合わせて効率的に
室外機やユーティリティ配管類を配置することが可能です。
室外機からの排熱も煙突効果によって効率的に建物上部へと導いてくれます。
このチョコパネルはJR側からの視線に配慮するためだけではなく、
社会ニーズの変化にフレキシブルに対応する製造環境をスマートに
美しくサポートする機能も持っているのです。




  SDA賞の応募パネルの中で「おいしい風景」という言葉を
タイトルに使っていらっしゃいましたが、
それに対して素材や作り方に相当こだわりがあったと思いますが・・。

チョコレート工場のファサードが板チョコというアイデアは
とてもシンプルでストレートでわかりやすいものですが、
とても強い表現となってしまいます。
こんなにも大きな板チョコをどのような関係性において、
どのような表情で、この地域の日常の風景のなかに
置いたらよいのかと大いに悩みました。
あれやこれやと色々と悩んでいるうちに、
ふと、風景の中に置かれたチョコレートを見て「おいしそう」と、
「おいしそう」に感じてもらえたら、
何かいろいろうまくいくのではないか、
地域との関係が成立するのではないかと思い至ったのです。
お菓子の「おいしさ」「楽しさ」が日々の生活に「元気」を与えるように、
このチョコレートが「おいしい風景」として、
見る人に「元気」を届ける存在になればという
願いを胸にこのプロジェクトに取り組もうと思いました。
方針は決まり、おいしさを表現するには
どうすべきかとひたすらスタディしていきました。
方針が決まった後も、多くの壁に当たり、試行錯誤を繰り返しました。
例えば、法規制の問題、スケールの問題、最適な素材と仕上げの吟味、
目地無しのディテール、製作場所と期間、施工方法、等々。


  具体的に「おいしそう」に見える為の工夫はどんなところにありましたか?

約166m×28mという大きさの板チョコに対して、
おいしいチョコレートのイメージであるツヤツヤ感や、
なめらかでシームレスな表面を実現するため、
最適な素材と仕上げを吟味し、
建築的なディテールを徹底的に消去しました。
可能にしたのはベトナムでの手仕事です。
素材は繊維強化プラスチック。
型枠をピカピカに人力研磨し、
樹脂表面層に顔料を混入する着色方法により、
極めて平滑でなめらかな表面を実現しました。
板チョコを構成する四角い一粒一粒(幅11.9m×高さ9.4m)に分割ラインは見えませんが、
分割して船便輸送できるよう、
実は15個のパーツに分かれています。
分割ライン等の建築物としてのディテールが少しでも見えてしまうと、
おいしさ感が消えてしまうと考え、
一つ一つ手仕事で調整し、
パーツごとのクリアランスゼロを実現しています。



  なるほど、目地が目立ってはおいしさに影響しますね。
他には?

色についても悩みました。
「明治ミルクチョコレート」のパッケージのチョコレート色は
ご覧の通りの深いチョコレート色ですが、
中のチョコレートは
(とチョコを取り出す。
・・・渡辺さんは明治ミルクチョコレートを持ってきてくださいました)、
パッケージの色より明るいミルクチョコレートの色なのです。
わたしたちのイメージの中に強く存在する「明治ミルクチョコレート」の色は、
このパッケージの深いチョコレート色だと考えました。
この色を基準として明暗や色味を
少しづつ変化させたパネルサンプルを屋外に設置し、
一日の光の変化や、
日ごとの天気の移り変わりでの表情の変化を観察し、
最終的な色を決定しました。
晴れた日の午前中は、
本物のミルクチョコレートと
同じ明るいミルクチョコレート色に見える時もあります。
表情豊かです。




  確かに実際のチョコって思っている以上に色は明るいですね。
艶についても実物のチョコレートは異なりますね。

そうです。
ビッグミルチは鏡のような全艶としています。
あるとき、明治様の研究所の方から、
艶やかなチョコレートが理想のチョコレートの
一つの姿だというお話をお聞きしたからです。
おいしいチョコレートの
イメージであるツヤツヤなチョコレート。
空や周辺の風景をうつし込み、
光の変化や季節の移り変わりにより刻々と変化する表情がとても美しいです。
極めて平滑でなめらかな表面によって汚れが付きにくいという利点もあり、
すでに竣工してから半年以上経っていますが美しいままです。


  素材として選択した繊維強化プラスチック(FRP)に
ついてはいかがでしょうか?

明治様はこの板チョコの型の
基本的なデザインを変えないようにしながら、
長年にわたって小さな改良を積み重ねてきていると聞いています。
個性的な形状、艶やかでなめらかな表情。
実はこの形には様々な機能的な秘密やおいしさの秘密があるとのこと。
だからこそ、このチョコに固有の形や質感を忠実に再現したいと考えました。
様々な素材を検討し、最終的に繊維強化プラスチック(FRP)としました。
この素材はそれを可能にする素材でした。
また、明治様は耐久性やメンテナンスの問題も大変気にされていました。
FRPは非常に耐久性の高い素材です。
それゆえにリサイクルコストがまだまだ高い素材でもありますが、
長く使い続けることがサスティナブル社会におけるデザインの出発点と考えました。
また、樹脂表面層に顔料を混入する着色方法により塗り替えを不要とし、
メンテナンスフリーとしています。
それに何より、型に流し込んで作るチョコレートと同じ製法により、
FRPの表面は脱型した瞬間にツヤツヤでなめらかで美しいです。




  表面にmeijiのロゴの彫り込みがありますが、
これは新しいロゴですね。

そうです。
2008年のプロジェクトスタート時はまだ、
亀倉雄策さんがデザインされたロゴでした。
プロジェクトの途中で新しいロゴに変わりました。
チョコレート表面へのmeijiのロゴの彫り込みについては、
実際のチョコと同じ比率の大きさと深さのままとしました。
もっと目立つように大きくというご意見もありましたが。
形状は忠実に再現するという考えとしました。
本物のチョコレートと同様、当たる光の角度によってくっきりと見えたり、
ぼんやりとやわらかく見えたりと表情に変化が生まれています。


  そうですね。
この形そのものがアイデンティティですものね。
そういえばSDA賞の応募パネルの中に
明治だけでなく
他社のチョコレートの写真がありましたが、
あれはチョコの形にすごくこだわっているっていうことだったのですね。

そうです。
「明治ミルクチョコレート」だけでなく各社の板チョコを
集めて形や質感等を調べてみました。
そこで気付いたのは、板チョコと聞いて、
わたしが思い浮かべる形のイメージは、
「明治ミルクチョコレート」の形に近いものだということです。
あくまでわたしの場合ではありますが。


  なるほど。板チョコという共通イメージ。
人それぞれがもっている共通のイメージがあるってことですね。

そうです。このチョコはいい形をしています。
本当にいいライン、ふっくらしたラインです。(渡辺さんウットリ)




後編につづく











by sda-interview | 2011-12-19 11:17
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